中堅中小が相次ぎ進出

先日チェンナイである日系企業の駐在員にお会いしました。その前の赴任地はベトナムだったそうで、ベトナムからチェンナイは天国から地○(チェンナイの人に悪いので伏字にしました)だとおっしゃっていました。


チャイナプラスワンの候補地、いやこれから海外に出て行こうとする中小にとってはプラスワンではなく、オンリーワンの候補地としてベトナムは魅力的に感じます。特に生活環境が良い。食べ物がおいしい。でも将来の成長力からいくとやっぱしインドだと思います。そういえば、この1ヵ月でベトナム進出を発表した中堅、中小企業がいくつもありました。海外市場をめざして果敢に出て行く企業がどんどん増えてきています。


日本鏡板工業、ハイフォンに製造出荷拠点を設立 ベトナム・ハイフォン市にプラントの圧力容器や産業用ボイラを製造する全額出資子会社「アールケーエンジニアリング」を設立した。新興国の中でも高成長が続く同国で需要を開拓し、日本や東南アジア、中国への製造出荷拠点と位置づける。資本金は4800万円。2012年に売上高5億円、15年に同10億円を目指す。 (5月24日 日刊工業新聞


黒田電気ベトナムの自動車部品メーカーを買収 ベトナムの自動車部品メーカーBoramtek社の経営権取得のため同社の親会社であるHiVAT グローバル社(韓国)の株式 51%を取得すると発表した。HiVAT社はBoramtek社の株式保有のために設立された持株会社で、同社株式の 51%を取得することにより、黒田電気はBoramtek 社の実質的経営権を取得する。(5月26日 同社リリース)


メタウォーター、ベトナムで分散型浄水事業を展開へ 北中部トゥアティエンフエ省で分散型浄水及び水供給事業の展開を計画している。同社が海外で水供給事業を手がけるのはこれが初めて。計画では2012年に小規模浄水プラント2基を同省に設置し、中央管理センターからの遠隔操作により分散供給するシステムの実証試験を開始する。採算性が取れれば、2014年に事業化する方針。なお、今回の実証試験は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に採択されている (5月25日 VIETOJO)


東海興業、ダナン進出を検討:東西回廊でタイ拠点結ぶ ダナンに進出する方針を固めたようだ。タイ・アマタナコン工業団地の子会社の労働力確保が、困難な状況になりつつあり、政治・経済が安定しているベトナムへの進出を検討。東西経済回廊の陸送が容易なことからダナンが有利と判断している。(5月23日 NNA)


アサヒ衛陶ホーチミンに販売子会社設立 ホーチミン市に100%出資の販売子会社(ビナアサヒ社)を設立すると発表した。 今後の中長期的な会社の成長のエンジンとして海外市場、特にベトナムを中心としたアジア市場にも注力する意向で、これまでベトナムを中心としたアジア市場の調査を重ねてきた。既にベトナムにおいては大型開発プロジェクトのサンプルルームへの納品や具体的な商談が進んでおり、中長期的には『海外で企画開発した製品を“ベトナムを中心としたアジア市場”に納品するビジネス』を会社の成長の柱の一つとしていく方針。(5月20日 同社リリース)

世界のスーパーマーケットが参集

週末は Phoenix Millsというムンバイ南部で一番大きなショッピングモールに行きました。Mills(=工場)の名前が残っているように、元々は大きな工場だったところにつくられたショッピングモールで、その当時の太い煙突を一本だけ残しています。写真の左上にある赤と白の模様があるのがその煙突です。


スワロフスキー、ZARA、BodyShop、サムソナイトマクドナルドなどの国際的なブランドの入った優雅なモールビルですが、中核テナントはBigBazarというインド最大のスーパーマーケットです。でもBigBazarで買い物をして違和感があったのは、殆どの商品がMRP(Manufacure Recommended Price=生産者指定価格)で売られていることでした。大量仕入れ大量販売で定価から割り引いた価格で商品を販売するのがスーパーマーケットのビジネスモデルであるはずなのに、インドではスーパーでも定価販売なんです。


インドの小売業は外資規制しており、現時点では外国資本が1%でも入った企業は小売はできません。例外はフランチャイズとして進出できる分野(例 マクドナルド)と外国資本が51%以下の単一ブランド小売店(例 ZARA)となっています。この小売業への外資規制が自由化される方向で政府内で調整されているようで、世界的なスーパーマーケットが参入してくるのは時間の問題です。外資規制が解かれる前に、WalmartTescoなどは既に卸売分野でインドに進出しています。


Bharti財閥との合弁で卸売分野に2007年に進出したWalmartは現在6店舗を持っていますが、ここへきて店舗網拡大にアクセルを踏みこんでおり、合弁会社Bharti Walmartはこの2年以内に新規店舗を20店オープンすると発表しました。卸売合弁会社でインドにしっかり地盤を築き、小売外資規制緩和の時点でスタートダッシュして巨大なインド市場を獲得する戦略です。

新聞記事に日本の小売の名前が出ていないのが寂しいが、水面下ではインド進出の準備をされていると思います。10年以内にアメリカ、中国に次に位置する大消費市場になるインド市場ですから。


***以下は5月5日付のTheWallStreetJournal記事の要訳***
記事全文は→http://www.livemint.com/2011/05/05230121/Bharti-Walmart-to-double-store.html

世界で一番大きな小売店との合弁企業Bharti Walmart Pvt. Ltd.は、これからの2年間で新たに20店の卸売店を開き、インドで一番の卸売店を目指している。同社は現在までに45百万ドルを投資してインド国内に6店のBest Price Modern Wholesale storeを設置している。CEOのJain氏によると、今後はインド南部に力を入れ、2012年までには195百万ドルの投資を行い新規店舗を設置、又同時にサプライチェーンも整備していく。

フランスのCarrefour SAもニューデリーに卸売店をオープン、イギリスのTesco plcは今年後半に最初の卸売店をオープンする計画である。ドイツのMetro AGは2003年にインドで最初の卸売店を既にオープンしており、今後5年以内に50店舗までに拡大していく。



***以下おまけ***

牛も一緒に雨宿り
ムンバイは先週から雨季に入りました。高架下で雨宿りしていた時に撮った動画です。

CO2削減に風力発電産業を強化

今年12月に南アフリカで開催されるCOP17(第17回国連気候変動枠組み条約締約国会議〜長い名前)で京都議定書に代わる新たな合意(CO2削減目標)がなされねばならないとう状況です。

順位 エネルギー総使用量(百万トン) 一人当使用量(Kg)
1 アメリカ合衆国 2,123 7,039
2 中国 1,568 1,203
3 インド 437 385
4 日本 423 3,357
5 ドイツ 284 3,449
6 カナダ 284 7,196
7 イギリス 205 3,357
8 フランス 170 2,762
9 韓国 161 3,309
10 ブラジル 158 823

出典:UN, Energy Statistics Yearbook 2007

上記は各国のエネルギー使用量を石油に換算したランキングです。
石油がぶ飲みのアメリカが1番多くエネルギーを使っていますが、2番3番には新興国である中国とインドとなっています。ところが、人口一人当たりに換算すると様相が異なり、先進国は軒並み3,000Kg以上であるのに対し、中国やインドは3分の一となっています。(この表には出てませんが、一人当たり一番エネルギーを消費しているのは石油産出国のカタールで17,899Kgと日本の5倍以上)
これがCOPでの先進国と後進国の議論がぶつかるところ。「先進国は現時点で既に一人当たりのエネルギーをたくさん使って豊かな生活をしている。まだキャッチアップ中の後進国に対して先進国と同様のCO2削減率を求めるのはおかしい」、というのが中国を中心とする後進国の主張です。(中国は後進国とは思いませんが。。。)


一方、COPではCO2削減をコミットしていないものの、実際の中国政府の動きを見ているとCO2削減のために再生可能エネルギーに力を入れています。中国電公司が先日発表した白書によると、風力発電能力を2015年には90ギガワットに、150ギガワットに引き上げると発表しています。
先日私が訪問した土漠の中の都市、楡林でも、市のお役人が説明するにあたって、年間風量がこれこれで年間日照量はこれこれで自然エネルギーにも恵まれている、と自慢されていました。中国中央政府はCOPでは先進国と対立しているものの、地球環境を考えてCO2削減のための政策を打ち出していくでしょう。従って、風力などの再生可能エネルギー技術を持っている日本企業にもチャンスだと思います。


***以下プレスリリースの要訳***

リリース本文はこちら↓
http://www.sgcc.com.cn/ywlm/mediacenter/corporatenews/04/245999.shtml


「中国の風力発電は2015年には90GWを超え、2020年には150GWに達する予定である」と中国電公司が発行した風力発電推進白書は発表している。中国でこの種の白書が発行されたのは今回が初めてである。

今年3月の時点で同社が接続している風力発電は33.16GWであり、R&Dを強化するとともに技術の標準化を図っていこうというもの。白書では、風力発電以外にもUHV、地域間グリッド、スマートグリッド揚水発電についても書かれている。

土漠にあるエネルギー産業都市

4車線の道路の上下それぞれ1車線は大型トラックがゆっくりと列をなして走っています。それが何キロも延々と続いている。今日の午後8時頃、楡林の町から空港への道で見た風景です。「この町のパワーを表している」と、一緒にいた中国人が言っていましたが、まさにその通り、日本では見ることのない大型トラックの行列に脅威を感じました。

今週はある日本の製品売込みのために中国に来ています。


(見渡す限り土と砂と背の低い木、これが地平線のはるか向こうまで続いている)



秦の始皇帝の時代からの古都、楡林市は北京から飛行機で1時間ほどのところにあります。市の西北は内蒙古に接していて、周りを土漠に囲まれた辺ぴなこの古都ですが、近年エネルギー産業都市として急速に発展してきています。石炭の埋蔵量(推定、以下同)2,700億トン、石油14億トン、天然ガス6万億立米、岩塩6万億トンという豊かな資源を持っています。地下資源だけではありません。この地域には太陽と風の降り注ぐ広い広い土漠があります。クリーンエネルギーの生産基地として、海外のエネルギー企業がこの町に来ているようです。太陽光発電で有名なアメリカのイーソーラ社もつい最近、楡林に広大な土地を確保しました。かつては全く価値のなかった土漠ですが、時代の変遷により価値を持って来ています。

世界最大の工業国である中国は地下資源も豊富です。一方、我ら日本は地下資源もありません。でも、蓄積してきた技術と目標を設定するとまい進できる国民性は大きな財産です。改めて言うこともありませんが、技術と製品を海外に販売していくのが地下資源のない日本の生きる道です。

先週はインド、今週は中国に来ていますが、インドと比べると中国は何て整然としているのだろう、何て文明国なんだろうと改めて感じます。どちらも急速に成長している大国ですが、中国はインドの10年先を行っていますね。逆にいうとインドも10年以内に中国のような国になると思っています。

ムンバイ事務所スタート

インドは今夏真っ盛りで学校は夏休み、私は毎朝日焼け止めを塗って外出しています。40度の高温が続くアーメーダバードから30度ちょっとのムンバイに入ったら結構涼しく感じたりして、人間は環境に同化できるものだと感心しています。
先週からムンバイに入っており、ジェトロムンバイのBSC(Business Support Center) に入居してムンバイ市内を動いています。

BSCの事務所とその窓から見下ろすアラビア海、その先には中東があります。


日本の中小製造業の持っている製品や技術を欲しているインド企業がたくさんあると、今回お会いしたインドの方や日本の方は皆さん言われています。成長しない日本市場で手をこまねいているよりも、急拡大しているインドで挑戦した方が、努力に見合う結果がはるかに得られます。昨年から売り込んでいた日本製品の初契約がもう一息のところまで来て、改めてそう感じています。Webで知り合い、リアルで信頼を深めビジネスを始め、ITで効率的に業務を継続拡大していく、というパターンをこのインドで継続していきます。




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今回は初めてムンバイの近郊鉄道に乗りました。日本人のインド旅行記を読むと、列車の切符を買うのすら大変だと言う印象でしたが、それはもう昔のことで、窓口に少しならんで切符を買い、電光掲示板を見て列車に乗るだけとすごく簡単でした。


日本の列車と違いドアがないのがちょっと危険な感じがしますが、写真のように棒にしっかりつかまって顔を外に出して涼みながら乗っている人がたくさんいました。ムンバイ市内の道路は混んでいるので、列車が空いている昼間は列車で移動した方が効率が良いです。

LG電子本国を超えるインド売上高見込む

韓国のLG電子はインドで最も成功した家電メーカーと言われており、自動車市場で成功しているスズキと同様に早くからインド市場に目をつけて地道な努力を続けてきて、今やエアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなど家電分野においてインドでトップシェアを握っています。韓国家電のトップであるサムソン、日本のパナソニックソニーなどの巨大メーカーを凌駕してのトップシェアです。

LG電子も日本円換算で売上高2兆円を超える巨大メーカーであり、その本国での売上規模は70億ドル(約6,000億円)と巨額です。現時点では韓国の半分に留まっている(といっても巨額ですが。。。)インド売上高がわずか3年か4年のうちに超えてしまうと、と同社インド法人トップが伝えています。
インド自動車市場で圧倒的なシェアを持っているスズキの場合は、四輪車販売台数が日本国内向け61万台(10年4月〜11年3月の12ヵ月)に対してインド市場向けは113万台(同)となっています。売上高は公表されていません。因みに、10年3月期のスズキ本社単体ベースの日本国内向け売上高は7,500億円、マルチスズキは2,000億ルピー(約4,000億円)となっていたが、11年3月期は6,000億円前後と日本が指呼の間となってきましたね。


LG電子、スズキともに本国でも大メーカーで売上高は巨額ですが、その本国の半分程度まで追いついて来たインド子会社です。消費財を扱っている大メーカーのみならず、中小製造業にも急拡大するインド市場に参入するチャンスはあります。勿論、ものすごい努力が必要ですが、同じ努力をするのなら成長市場で努力した方が良いと思っています。


*** 以下YahooIndia記事の要訳 *****

消費財メーカーのLGインディア社長のSoonKwon氏は今後3年か4年以内に、同社のインド市場売上高が、同社の韓国市場売上高を超える見通しであると語った。同社の韓国国内売上高は70億ドルで、インド売上高は現在35億ドルと韓国の半分の規模になっている。韓国市場は頭打ちだがインド市場は急速に拡大している。今年のインド売上高は2,000億ルピー(約45億ドル)を計画している。
同社にとってインド市場は重要であり、韓国、中国、インドネシアに次ぐ同社の4番目の生産ハブになるであろう。

記事原文はこちら↓
http://in.news.yahoo.com/lg-india-overtake-parents-sales-korea-3-4-20110411-020800-398.html

中国の新規原発承認停止と代替エネルギー

事故後3週間以上経過するも、福島原発放射性物質漏れは止め切れておらず、あらゆるメディアで報道され続けています。農水産物に対する風評被害も甚大であり、早急に解決されることを祈っています。


想定を大幅に超えた福島原発事故を見た各国は、原発政策の見直しを行っています。


例えば、ドイツ政府は稼働している17基の原発のうち7基の原発を一時閉鎖すると震災後2週間で決定。
The Wall Street Jounalの関連記事↓
ドイツ、原発7基を一時停止へ
 http://jp.wsj.com/World/Europe/node_200236


フランスはまだ原発停止を決定していませんが、隣国スイスの州より停止要求が出ています。
毎日.jpの関連記事↓ 
 国境のスイス2州がフランス原発停止要求
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110401k0000e030031000c.html


中国は一番早く、震災後僅か1週間であらゆる新規原発の計画停止、稼働中の全原発も緊急安全検査を実施する。
Asahi.comの関連記事↓
 中国、原発の新規計画一時停止 国民に不安広がる
 http://www.asahi.com/international/update/0317/TKY201103170534.html


二酸化炭素を排出しない、コストが安い(相対的に)、という原発は今まで各国とも注力してきましたが、今後はどの国でも原発の新設は不可能になったと思います。そして、太陽光、風力、波力、地熱、太陽熱などの再生可能エネルギーが今まで以上に注目を浴びるようになってきています。

既に各国株式市場はこの動きを反映しており、再生可能エネルギー関連企業の株価は上昇しています。例えば、ドイツの太陽光発電機器メーカーSolarWorld社は約50%、デンマーク風力発電設備メーカーのVestas社は約30%、いずれも3月11日から株価が上昇しています。日本でも家庭用の小規模な太陽光発電は普及拡大していますが、大規模な再生可能エネルギー発電所はメガソーラー、風力発電ともまだ実験段階に留まっています。未曾有の災害を現在体験している我々日本人、日本企業だからこそ、将来に向かって代替可能エネルギーで世界を引っ張って行くことができると信じています。